最近新人歌い手さんの録音やMIXをさせていただく機会が多くなりました。
そのときに、曲のチョイスが「無茶してるなー」と思うことが沢山あるんですよ。
好きな曲、いい曲を選ぶのはわかるんですが...正直歌うのがかなり難しい、今の実力以上の曲を選んでしまっている事が結構あります。
そこで、今回はMIX師の視点で「新人歌い手さんがカッコよく歌うのが難しいボカロ曲」を独断と偏見で紹介したいと思います。
難しいボカロ曲条件
まずは具体的な曲紹介の前に、こんなふうな曲は難しい、といった条件をいくつか紹介していきたいと思います。
後で上げさせていただく曲以外にもこの条件に当てはまるものは難しい曲になるかと思います。
イントロなしで歌から始まる曲
イントロなしで歌から始まる曲ですね。
シャルルヒバナなど人気曲の中でも結構多いと思うんですが、かなり難しいです。
理由は、音程がめちゃくちゃになりやすいことと、歌い出しからリズムが取りにくい、入れないからです。
音程が取りにくい理由として、人間は歌うとき、オケの音を基準に相対的に歌声の音程をを判断しているので、何にもないところから正しい音程を歌い出すのは、しっかりとその曲の音程を叩き込む練習が必要です。
またリズムに関しては、流れているオケのリズムに乗って歌うのではなく、クリックでしっかりとリズムを掴む事が初心者には難しいです。今まで歌や、楽器の経験がない方はクリックのリズムにに乗れないことが多いです。
クリックって何?
っていう人はイントロなしの曲は避けたほうが無難です。
メロディーが極端に上下する曲
この辺りは非常にわかりやすい理由かとは思いますが、音域が極端に広く、高音から低音までの上下が激しい曲は歌うのが非常に難しいです。
こういった曲を歌い上げるにはかなりしっかりしたトレーニングが必要です。
展開がなくメロディーが平坦な曲
メロディーが上下する曲が難しいのはわかりやすいと思いますが、平坦な曲が難しい理由は何でしょう?
こういった曲はただ歌うだけでは全くカッコよくないからです。
リズムに乗って、音程通りに歌うだけがいい歌ではありません。しっかりとした感情表現ができてこそ初めていい歌です。
音域が広くメロディーが上下する曲は、ただ歌えるだけでそれなりによく聞こえます。
ですが、メロディーが平坦な曲はただ歌うだけではなんの魅力もない曲になってしまします。
そういった意味で「カッコよく歌う」のが非常に難しいと言えます。
リズムが複雑
複雑なリズムの曲は本当に歌いにくいです。初心者はまずリズムに乗れません。
変拍子を多用した”いかにも難しい”曲はもちろんですが、新人歌い手さんが注意してほしいのが「8ビート」や「4つ打ち」以外のビートを刻んでいる曲です。
ジャズっぽい曲やワルツ(3拍子)なんかは要注意です。
歌詞を詰め込んでいる曲
わかりやすく言うと早口言葉みたいなやつ。
これは音程、リズム共に難しいのと、かなりの滑舌が求められるので初心者にはちょっと厳しいですかね。
オケにコード感がない&ベースラインがルートから大きくハズレている
ギターやピアノ、シンセサイザーなどのコード(和音)を奏でるパートが和音を弾いていない事。
これは本当に音程感がないので歌いづらいです。
また、ベースがルート以外の音を弾きまくっているパターンも音程感が不明瞭でとても歌いづらいです。
難しいボカロ曲の実例紹介
それでは、ここからは人気ボカロ曲でカッコよく歌うのが難しい曲を紹介していきたいと思います。
あくまで「歌うのが難しい曲」といった条件なので、いい曲とか僕の好みとかは全く関係ありませんので悪しからず。
シャルル/バルーン
さっきからちょくちょく登場していますが、最近MIX依頼をいただく中で一番難しいと感じるボカロ曲の筆頭ですね。
なんせ紹介した難しい曲の条件をコンプリートしているんじゃないかと思います。
まず、イントロなし、歌始まり(しかもアーフタクト)。歌い出しからズッコケる事間違いなしです。
またサビの音程の上下はえげつないです。ファルセットが苦手な男性には本当に厳しいと思います。
さらに歌詞の詰め込み方!
Aメロの「そうやって理想のことも〜」は歌詞を詰め込んであるくせにリズムも複雑!
そしてなんと言ってもドラムのビート。
よくあるビートではありますが、歌ってみるとめちゃくちゃ歌いにくい。
初めて歌う人は絶対モタります。
そして極めつけは左右に大きく振ったコード感のないギターと、ルート感の薄いメロディアスなベース。シャルルを録音するときは必ずオケをmonoにします。
「初めて録音します!」って歌い手さんは
・歌い出し入れない
・リズムがモタる
・音程がむちゃくちゃ
って感じになります。
ロキ/みきとP
尖った曲でとってもかっこいいですが、この曲もまぁ難しい。
めちゃくちゃ人気ですけどね〜
まず、歌詞と歌メロのリズムがエグい。後滑舌。
そして、全体的に普通に歌ったたら全然それっぽくない。歌い方を工夫して”らしさ”を出さないと結構ダサくなっちゃう。
なんにしてもしっかりどんなふうに歌うのか練習してからじゃないと難しいですね。
天ノ弱/164
この曲は僕もものすごく好きな曲です。曲の展開もわかりやすくて、特にギターとベースのラインがメチャクチャかっこいいです!
ですが歌うのはちょっと難易度高め。
まず、歌入り&オケのギターがメロディアスでコード感がない。
そしてAメロのスラップベース。
Bメロの突然の3拍子。
ダメ押しでラストサビのブレイク後の転調。
基本的にこの曲はオケがずっとリフを刻んでいる&ビートが常に変わっていくので、しっかりとリズムに乗って歌うことができなければ歌い上げるのは難しいでしょう。
エゴロック/すりぃ
この曲はすりぃさんの60秒シリーズ。
1コーラスしかないことから初心者が手を出すことが多いと思いますが、結構難しいです。
まずテンポが早い!
SKAとかPUNKっぽいので全体的に少し前のめりになるくらいで歌わないとダサいです。
あと、すりぃさんの曲すべてに言えることかもしれませんが
メインボーカル以外のネタをそれぞれ考えて色々とやらないとかっこよくならないです。
命に嫌われている。/カンザキイオリ
とても感情的な歌詞が胸に突き刺さる名曲。
この曲は、今まで上げてきた曲と違ってテクニック的にはそんなに難しいところはありません。
リズムもメロも凄くシンプル。とても歌いやすいです。
それ故にただ歌うだけでは全然様にならない曲でもあります。
歌詞の世界観をしっかり落とし込んで、それぞれの感情をのせて歌わないと曲の世界観を表現することはできないし、ただ上手く歌っているだけになってしまいます。
プロのボーカリストの方に聞くとこういう曲のほうが本当に難しいらしいです。
病名は愛だった/Neru & z’5
この曲は歌が難しいとか以前にMIXで加工する事が前提の曲なので、自分でMIXをデキる人か、良いMIX師を見つけられた方のみ挑戦しましょう!
まとめ
ということで、カッコよく歌うのが難しい曲をご紹介させていただきました。
色々書きましたが、最初のうちは色々歌ってみるのがいいと思います。
まずは簡単な曲からステップアップしていくもよし、難しい曲に果敢に挑戦していくもよし。
次回はカッコよく歌いやすいボカロ曲を何曲かご紹介できたらと思います。
それでは!