【コンプの落とし穴】歌ってみたのMIX

COMP

今回はみんな大好き、コンプについて書いていこうかなーと思います。
コンプって効果がわかりにくいのので、ついつい適当なセッティングでなんとなくつかってしまっていたりしがちですが、適切に使わないとMIXを破綻させてしまいかねないので、間違ったセッティングなど、今回はコンプについて切り込んでいこうと思います。
なお、歌ってみたのMIXでボーカルに使うことを想定して書かせていただきます。

コンプかけすぎ問題

まずは、この問題から。
MIXが上手くいかない原因の一つに過剰なコンプレッションがあります。
そして、何がやりすぎかわからないというのも問題です。

コンプは効果がわかりにくい

この原因としては、コンプは短時間でon-offしても効果がわかりにくい事にあります。

まず、特殊な味付けのあるものをのぞいて、コンプは短時間の再生では効果がわかりません。
なぜならコンプはあくまで、音量の大小を圧縮するものであって、音質を変化させるものではないからです(乱暴に言えばフェーダーを上げ下げして音量を変化させたのと同じ事を自動でやってくれているものです)
そして音量の変化は1フレーズなど短期間ではわかりにく、例えば、Aメロよりサビの方が大きいとか、この言葉だけ他と比べて小さいとか、相対的に判断するものなんです。

ここまで書くと何となく分かると思いますが、音量を変化させるとき、できれば音質は変化させたくないですよね?
なので、コンプは音量を変化させたときに音質ができるだけ変化しないように開発されています。
実は、いろいろなところで言われているコンプによる味付けは、副作用だと思ってください。
つまるところ、コンプのセッティングで1つ正解を作るなら、音質が変化せず音量のバランスが揃っていること、もっと言えば効果がわからないのが1つの正解なんです。

なぜコンプをかけすぎてしまうのか?

コンプの効果について書いたのでなんとなくわかると思いますが、100%音質を変化させず音量だけを変化させることははっきり言って無理です。少なからずコンプレッションがかかると音質に変化が生じます。
そして、その効果はハードにコンプをかければよりわかりやすくなっていきます。
ですので変化をはっきりと感じるまでコンプをかけてしまうと、やりすぎになってしまうという事態にになってしまうのではないかと思います。

もう一つ、これはボカロPや歌ってみたのMIXだけに言えることかもしれませんが、某有名ボカロPがコンプについて
ボカロには深くコンプをかけて声を前に出す
というような発言をしていたそうです。
記憶が曖昧な上ソースもありませんが、ボカロPやMIX師界隈ではよく聞くので、誰が言ったかはともかくワリとメジャーな意見にはなっているはずです。
この発言を真に受けると「コンプを深く掛ける」⇒「歌が前に出る」といったふうに思えるかもしれませんが、大事な要素が抜けています。

アタックタイムとリリースタイム

コンプの大事なパラメーターに「アタックタイム」と「リリースタイム」があります。
※パラメータに関してはこちらの記事も参考にしてください。

上記のボカロには深くコンプをかけて声を前に出すにはこの要素については一切触れられていません。
恐らくですが、このボカロPは「アタックタイムを遅く、リリースタイムを早く」設定したコンプ(もしくはアタックタイムが遅く設定されている機種)を使用する前提で言っているのではないかと思われます。
どういうことかと言うと、言葉の頭は圧縮されず余韻のみが圧縮されるるので歌詞が聞き取りやすくなり、かつ適度に音量差が無くなるので、聞き取りやすくかつ迫力が出る⇒声が前に出るということになるのです。

ちなみにWavesの人気プラグイン【R Vox】はアタックタイムとリリースタイムがありませんが、概ね上記のような設定を自動で行ってくれます。

コンプを深くかけるべき場合

ここまで書くと歌ってみたにMIXでコンプを深くかけるのは悪い事のように思えてしまいますが、そんな事はありません。
使うべき場面ではコンプを深くかけなければならないときもあります。
その一例をご紹介します。

ハモリ等バックコーラス

これが一番オーソドックスな使い方かもしれません。
コンプを深くかけると歌が奥に引っ込む感じがしてくると思います。
ハモリなどのバックコーラスは、前に出て目立つ必要は無く、むしろ適度にボーカルより後ろに位置し、かつ音量差があまりない方が望ましいです。
そのためかなり深めにコンプをかけてしまうことがセオリーとなっています。

早口言葉みたいな歌

早口言葉というと極端かもしれませんが、要は言葉数が多く比較的平坦なメロディーの歌の場合深めのコンプが有効です。ウィスパーボイスなどもこれに当たります。
こういった歌の場合、抑揚や音程よりもリズムと滑舌が重要になります。
ですので極端に言えば、すべての歌詞が同じ大きさで聞こえてくるのが理想になってきます。
そういった場合コンプで機械的に均してしまい音量を上げてしまったほうが手っ取り早いです。

息遣いを聴かせたいとき

バラードなどで息継ぎなど、印象的に息遣いが入っている歌があると思いますが、そういった効果を狙っている場合深めのコンプが有効です。
ですが、先に紹介した早口言葉と違って、抑揚などのダイナミックレンジが必要な楽曲が多いので、最終的にフェーダーオートメーションを丁寧に書いていくひつようがあります。

ロック(パンク)っぽく聴かせたいとき

これはちょっと特殊な使い方になると思いますが、ロックっぽい、目の前に迫ってくるようなあの感じを出したいときに使える技です。(かなり抽象的ですいません...)
コンプが深くかかる瞬間に起こる音質の変化、要は歪みなんですが、ディストーション系のエフェクトとはまた違った感じに歪んでくれます。
セッティングとしては、アタック、リリース共にほぼ最速に設定して、レシオを10:1とかかなり激しめの設定にします。
こうすることで独特の歪みが生じ、中々荒々しい感じになります。
好みがあると思いますので一度試してみてください。

まとめ

ここまで書くと「じゃあどんな設定がいいの?」と思うかもしれませんが、状況により違うので正解はありません。
ですが、所謂「普通のMIX」の場合、コンプをかける前と後でパッと聞いて大きな差がない事が正解だと思います。
コンプは音質に大きな変化を与えるものではありません。ですので他のエフェクトのように、音を変える目的で使用するのではなく、いかに音質を変化させること無く、音量差を無くす。そんな使い方が一つの正解だと思います。